高性能ホイールメーカーとして世界的な知名度を誇るBBS、そして、人間工学に基づいた高機能シートで多くのファンを持つRECARO。自動車好きなら誰もが知るこの2社の相次ぐ倒産劇、というショッキングなニュースが反響を呼んでいます。
この話題についての経緯、影響などについて解説いたします。
BBSとはどんな会社か
BBSは、ドイツに本社を置く、高性能・高級自動車向けアルミホイールの有名メーカーです。
BBSは「ホイールの王様」とも称され、その高い評価は確かな技術とデザインに基づいています。
BBSのホイールは鍛造技術を用いて製造されており、軽量でありながら非常に強度が高いのが特徴です
BBSのホイールは高価な製品が多くなっていますが、それだけの価値があると認めるファンは少なくありません。
長年の使用に耐える耐久性、そして飽きのこないデザインは、むしろコストパフォーマンスに優れていると言うことができます。
BBSの歴史
1970年に設立され、BBSの名前は、創業者であるハインリッヒ・バウムガルトナー(Heinrich Baumgartner)氏とクラウス・ブラント(Klaus Brand)氏の名前の頭文字から取られています。
当初、プラスチック部品の製造を行っていましたが、1973年、レース用鋳造3ピースアルミホイールを発表。
軽量かつ高強度という性能面だけでなく、その美しいデザインで世界中の注目を集めることになりました。
それが転機となり、レーシングカー用の軽量ホイール製造に着手しました。
F1ドライバーのミハエル・シューマッハが使用したことでも知られるモータースポーツでの活躍や、高級車への純正採用などで高いブランド力を誇っていました。
その優れた技術力は、自動車愛好家やレース業界において高い評価がされていました。
また、洗練されたデザインも大きな魅力で、メッシュデザインを筆頭にシンプルながらも力強い造形は、装着するだけでクルマの個性を際立たせることができます。
しかし、近年は経営難が伝えられており、過去16年間で4回目の破産に陥っており、今回の破産(2023年9月28日に破産申請)は2007年、2011年、2020年に続くものです。
日本では、1983年にワシマイヤーと技術提携を行い、「日本BBS株式会社」を設立しました。
これにより、日本での鍛造ホイールの製造と販売が開始され、2013年には「BBSジャパン株式会社」に名称を変更しました。
評価の高さの理由
技術革新
BBSは、一流の技術を駆使し、軽量かつ高強度のホイールを開発しました。
特に、鍛造アルミや複数ピースのホイールなど、軽量化と強度を両立した製品が多くの消費者に支持されています。
デザイン
BBSのホイールはそのデザイン美をもって評価されています。
ブランドのアイコンともいえる複合スポークデザインは、クラシックカーから最新のスポーツカーまで、さまざまな車両にフィットするエレガントなスタイルを提供します。
信頼性とパフォーマンス
レースで培った経験を基に、信頼性の高い製品を自動車市場に提供しています。
高性能車のオーナーにとって、BBSホイールは優れたコーナリング性能と、路面フィードバックを実現するための必需品です。
レースの実績
一流のレーシングチームによって採用され続けていることは、
BBSの技術力と信頼性を証明するものであり、これは消費者に絶大な信用を与えます。
BBSの経営難と破産の原因
エネルギー価格の高騰
エネルギー集約型の企業である
BBSにとって、ロシアとウクライナの戦争によるエネルギーコストの上昇は大きな影響を与えました。
市場環境の変化
世界的なSUV人気の上昇や、自動車メーカー純正ホイールのデザイン性向上により、アフターマーケットにおける
BBSホイールの優位性が低下しました。
高コスト体質
高品質な鍛造ホイール製造にこだわるあまり、製造コストが高止まりし、価格競争力を失っていきました。
2023年現在、BBSは事業継続に向けて、新たな買い手を探していると伝えられています。
長年、高品質なホイールを提供してきたBBSの今後がどうなるのか、多くの関係者が注目しています。
BBS社の倒産による影響
製品の入手困難化
高性能ホイールで知られるBBSが倒産したため、既存の在庫はすぐに不足する可能性があります。
特に、BBS特有のデザインやレース実績によって人気があるモデルでは、プレミア価格がつくリスクもあります。
アフターサービスの懸念
既存のBBSホイールを使用している消費者にとって、補修パーツの調達や保証対応が難しくなる可能性があります。
ユーザーが、メンテナンスや交換部品の供給で、困難を感じる場面が増えるかもしれません。
カスタム市場への影響
カスタムホイール市場では、BBSの倒産によって、消費者が他のブランドに流れる動きが、加速する可能性があります。
業界全体の競争は激化しますが、BBSファンには、代替の選択肢を探すという難題があります。
Recaroとはどんな会社か
Recaro(レカロ)は、自動車用シートを中心に、エルゴノミクスを重視した高品質な製品を提供するドイツの企業で、その長い歴史とともに高い評価を得てきました。
Recaroの製品は、レーシングカーから市販車、航空機に至るまで幅広く採用されており、その快適性と安全性が多くの消費者に支持されています。
Recaroの歴史
Recaroの起源は1906年にさかのぼります。
ドイツ・シュツットガルトにて、ヴィルヘルム・レウターが馬車の内装および自動車内装メーカー「Reutter Carosserie」を創立したのが始まりです。
1963年に自動車用シート専門メーカーとしてRECAROが誕生しました。
1963年にはポルシェ901のシートを開発し、1965年には世界初となるサイドサポート付きスポーツシートを発表し、シートメーカーとしての地位を確固たるものとしました。
クルマを「走る歓び」の空間へと変える魔法– RECAROの哲学
シートという、クルマの中で最も身体に近い存在。
快適性はもちろんのこと、時には乗員の命を守るという重要な役割も担っています。
数あるシートメーカーの中でも、RECAROは特別な存在感を放ち、単なるシートメーカーではなく、「座る」という行為を、五感を揺さぶる体験へと昇華させるブランド、それがRECAROです。
RECAROのシートが、多くの消費者に支持される理由は、同社が創業以来、一貫して守り続けている哲学にあります。
「form follows human」という言葉が表すように、RECAROにとって「人間工学に基づいた設計」は、決して揺るぐことのない根幹をなすものです。
長時間のドライブでも疲れにくい形状、身体をしっかりと支えるホールド性、そして、高品質な素材が生み出す快適な座り心地。RECAROのシートは、乗員の疲労を軽減し、集中力を高め、そして、安全性を確保することで、運転そのものを「歓び」へと変えます。
モータースポーツの世界でも、RECAROの功績は輝かしく、F1をはじめ、様々なレースシーンで採用され、数々の名ドライバーの走りを支えてきました。
過酷な状況下でこそ、その真価を発揮するRECAROのシートは、プロの厳しい要求に応え続けることで、さらなる進化を遂げてきたと言えます。
評価の高さの理由
エルゴノミクスと快適性
Recaroは、長時間の運転でも疲れにくい、解剖学に基づいた(エルゴノミクス)シート設計で高評価を得ています。
腰痛防止や、疲労軽減の面で、多くのユーザーがその効果を実感しています。
安全性と品質
Recaroのシートは、安全性を最優先に設計されており、多くのモータースポーツでの実用を通じて、その耐久性と信頼性が証明されています。
また、高品質な素材を用いることで、製品の耐久性と美しさを両立させています。
モータースポーツとの関係
レース用シートの世界では、Recaroは先駆者として知られており、多くのプロレーサーやレーシングチームによって選ばれています。
この関係が市販モデルの開発にもフィードバックされ、性能とデザインに一層の信頼を与えています。
幅広い製品ラインナップ
市販車向けシート、スポーツカー専用シート、高性能なレーシングシート、および航空機の座席など、Recaroは多様なニーズに応える製品を提供しています。
これにより、あらゆる用途において、快適で安全な座り心地を提供することができます。
Recaro社の倒産による影響
車両のエルゴノミクスの選択肢減少
多くの自動車メーカーが、純正装備としてRecaroシートを採用しています。
倒産によってこれらの選択肢が減ることは、消費者が期待する快適性と安全性を損ねる可能性があります。
シートの補修と交換
Recaroの倒産は、シートの補修や交換パーツの供給に、影響を与える可能性があります。
特にスポーツシートや特注仕様を用いる消費者にとっては、長期的なサポートが受けられなくなる懸念があります。
モータースポーツへの影響
Recaroシートは、レーシングカーや高性能スポーツカーで広く使用されています。
その倒産は、モータースポーツ業界の安全性基準やシートオプションに影響を与える可能性があります。
まとめ
世界的な不況や原材料価格の高騰、そして自動車メーカー純正部品の性能向上など、アフターパーツメーカーを取り巻く環境は厳しさを増しています。
今回のBBSとRECAROの破綻は、そうした厳しい現実を象徴する出来事と言えるでしょう。
BBSとRecaroの倒産は、自動車のカスタマイズおよび安全性能に関する選択肢を狭めることになります。
また、価格の急上昇や信頼性のあるアフターサポートの消滅など、消費者にとって不利な状況を生む可能性があります。
このため、消費者は新たな信頼できるサプライヤーを探す必要があるかもしれません。
自動車メーカーや関連企業が、どのようにしてこれらのギャップを埋めるかも、今後の注目ポイントとなります。